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塗料の退色・色飛びは紫外線だけが原因なのか?

執筆者の写真: ボディデザイン アウラン
ボディデザイン アウラン
5月14日
読了時間: 13分

更新日:5月15日

塗料の退色・色飛びは紫外線だけが原因なのか?

熱劣化まで考える外壁塗装の新常識

外壁塗装でよく聞く悩みの一つに、退色色飛びがあります。

「塗ったときはきれいだったのに、数年で色が薄くなった」「南面や西面だけ色が飛んで見える」「濃い色の外壁が白っぽくぼけてきた」「艶がなくなり、全体的にくすんで見える」

こうした現象を見ると、多くの場合、原因として最初に思い浮かぶのは紫外線です。

もちろん、紫外線は塗料の劣化に大きく関係しています。紫外線は塗膜中の樹脂や顔料に影響し、化学結合の切断やラジカル反応を通じて、色あせ、艶引け、チョーキング、塗膜表面の劣化などを進める要因になります。

しかし、これからの外壁塗装では、退色を「紫外線だけ」で説明するのは不十分だと考えています。

なぜなら、実際の外壁では紫外線だけでなく、熱、水分、湿気、雨、結露、方角、入射角、地域環境、施工品質などが複雑に重なっているからです。

特に現代では、猛暑、気温上昇、都市部のヒートアイランド、濃色外壁の人気なども重なり、熱劣化という視点が非常に重要になってきています。


外壁塗装の新常識を紹介する看板。退色と劣化の原因や対策を解説。建物の外観、劣化サンプル、可視光・紫外線の図示あり。
外壁の退色と劣化の原因を解説する新常識ポスター。紫外線だけでなく、熱、水分、環境などの要因が重なり合うことで、劣化が進行することを強調している。

退色とは、単に「色が抜ける」だけではない

塗料の退色・色飛びは紫外線だけが原因なのか?退色という言葉を聞くと、顔料そのものの色が抜けている状態を想像するかもしれません。

しかし、実際の外壁で見える退色や色飛びは、それだけではありません。

たとえば、

・顔料そのものが光で変化する・樹脂が劣化して顔料を守れなくなる・塗膜表面が粉化してチョーキングが起きる・艶が落ちて、色が薄く見える・表面が粗くなり、光の反射が変わる・汚れやカビ、藻が付着して色がくすむ・熱で劣化反応が加速する

このように、退色は一つの原因だけで起きるものではありません。

つまり、外壁の色飛びは、顔料・樹脂・紫外線・熱・水分・環境・施工が重なって表面に現れる劣化サインと考えるべきです。


紫外線は、退色の大きなきっかけになる

太陽光には、紫外線、可視光線、近赤外線が含まれています。

このうち、紫外線は波長が短く、エネルギーが高い光です。紫外線は塗膜中の樹脂や顔料に影響し、塗膜表面の劣化を進めます。

特に、塗膜の表層にある樹脂が紫外線によって分解されると、顔料が表面に露出しやすくなります。その結果、外壁を触ったときに白い粉が付くチョーキングが起こります。

チョーキングが起きると、外壁は白っぽくぼけて見えます。つまり、お客様が「色が飛んだ」と感じている状態の中には、顔料そのものの退色だけでなく、樹脂劣化とチョーキングによって色が薄く見えている状態も含まれます。

塗料・コーティングの耐候性に関する資料でも、日光、湿気、熱は塗膜劣化の重要な要因であり、屋外暴露では色変化、光沢低下、チョーキング、割れ、膨れなどが評価対象になります。Atlas_WP103_Coatings_Durability_2015-03-31.pdf



紫外線と熱劣化の影響を説明する、建物と塗料のイラスト付きの日本語ポスター。色褪せの進行と気温差の重要性が強調されている。
紫外線と太陽光が塗料の退色に及ぼす影響を詳しく解説し、熱劣化と表面温度の上昇を防ぐための具体的な対策を紹介するポスター。


退色を考えるうえで、なぜ熱劣化が重要なのか

ここからが、今回の大きなテーマです。

退色や色飛びは、紫外線だけでなく、熱劣化によっても進みやすくなります。

熱そのものが色を直接抜くというより、熱は塗膜内の劣化反応を進みやすくします。

温度が上がると、一般的に化学反応は進みやすくなります。塗膜の中では、紫外線による樹脂の分解、酸化反応、ラジカル反応などが起こりますが、外壁表面の温度が高いほど、これらの反応が速く進む可能性があります。

Atlasの耐候性資料では、近赤外線領域は表面加熱に大きく関係し、顔料や樹脂は可視光や赤外線を異なる形で吸収するため、色によって曝露時の表面温度が変わると説明されています。また、その温度差は化学反応速度や物理的な劣化挙動に影響するとされています。Atlas_WP103_Coatings_Durability_2015-03-31.pdf

つまり、熱劣化は退色に対して、劣化を加速する増幅要因として働くと考えられます。



濃色外壁は、熱劣化リスクを特に見る必要がある

近年、黒、濃グレー、濃紺、濃茶などの濃色外壁が人気です。

濃色の外壁は高級感があり、デザイン性にも優れています。しかし、塗料の耐久性という視点では、濃色外壁には注意点もあります。

濃色は太陽光を吸収しやすく、淡色に比べて表面温度が上がりやすい傾向があります。特に、近赤外線を吸収しやすい色や顔料設計の場合、外壁表面の温度上昇が大きくなります。

表面温度が高くなると、

・樹脂の酸化が進みやすい・艶引けが早くなる・表面が粗くなる・チョーキングが出やすくなる・シーリングや下地が動きやすくなる・膨れや剥がれのリスクが高まる

といった影響が出る可能性があります。

近赤外線反射顔料を使ったクールカラー塗料の研究では、近赤外線反射顔料を使用することで、同系色の従来顔料と比べて日射反射率や熱的性能を改善できることが報告されています。つまり、濃色であっても、どの顔料を使うか、近赤外線をどう扱うかによって、表面温度や熱負荷は変わるということです。都市環境向けの冷着色コーティングの開発、光学特性および熱性能について - ScienceDirect

これからの濃色外壁では、単に「かっこいい色」や「高級感のある色」だけでなく、近赤外線・表面温度・熱劣化への配慮があるかまで見ることが重要です。



現代では、熱劣化リスクが高まっている

熱劣化を重視する理由は、塗料の話だけではありません。

現代の気候環境そのものが、以前より高温化しているからです。

気象庁の「Climate Change in Japan 2025」では、日本の年平均気温は1898年から2024年にかけて、100年あたり1.40℃の割合で上昇しているとされています。また、東京などの都市部では、都市化によるヒートアイランドの影響で、全国平均より高い割合で気温が上昇していると説明されています。

さらにIPCC第6次評価報告書では、1950年代以降、熱波を含む高温極端現象は多くの陸域でより頻繁かつ強くなっていることはほぼ確実であり、人為的な気候変動が主な要因だとされています。cc2025_gaiyo_en.pdf

つまり、外壁塗装を考えるときも、これからは過去の気候だけでなく、高温化する環境の中で塗膜がどう耐えるかを見る必要があります。

「紫外線に強い塗料です」だけではなく、「熱が加わった状態でどうなるのか」「濃色で表面温度が上がったときにどうなるのか」「艶や色、チョーキングがどれだけ保たれるのか」まで確認する時代になっていると考えます。


退色と熱劣化リスクを説明するインフォグラフィック。都市の背景に家の写真。赤い矢印、グラフ、テキストで詳細が示されている。
気候変動による温暖化の影響と、熱劣化リスクに対抗するための塗料設計と施工品質の重要性を訴えるインフォグラフィック。

熱は、艶引けと色飛びを目立たせる

退色を語るとき、色だけを見るのは不十分です。

なぜなら、艶引けも色飛びに見えるからです。

塗膜表面が熱や紫外線によって劣化すると、表面が粗くなります。表面が粗くなると、光の反射が乱れ、艶が落ちます。艶が落ちると、同じ色でもくすんで見えたり、白っぽく見えたりします。

つまり、施主様が「色が飛んだ」と感じている場合でも、実際には、

・色差が変化している・艶が落ちている・チョーキングしている・表面が粗くなっている・汚れや水分の影響でくすんでいる

という複数の要因が重なっている可能性があります。Paint-Weatherability_AugSep-2022.pdf

Weathering評価に関する資料では、塗膜の屋外耐候性評価において、色保持、光沢保持、チョーキング抵抗性などを組み合わせて確認することが重要とされています。

退色は、色だけでなく、光沢・粉化・表面状態までセットで見るべき現象です。


熱と水分が組み合わさると、劣化はさらに複雑になる

外壁の環境は、実験室の中のように単純ではありません。

実際の外壁では、

・太陽光を浴びる・表面温度が上がる・夜に冷える・雨が降る・湿気が残る・結露する・また日射を受ける

という繰り返しが起きています。

屋外暴露された塗膜の研究では、黄変や光沢低下は紫外線量や曝露期間だけでは説明できず、湿度、塩分、降雨などの環境要因も関係すると報告されています。ETICSの仕上げコーティングにNIR反射色素を組み込む影響

つまり、退色や色飛びは、

紫外線 × 熱熱 × 湿気紫外線 × 水分熱 × 塩分水分 × 汚染物質

のような、複合劣化として見る必要があります。



顔料と樹脂の設計も、退色に大きく関係する

退色の原因を見るとき、顔料と樹脂の設計も重要です。

塗料の色をつくるのは顔料です。しかし、その顔料を守り、外壁に固定しているのは樹脂です。

そのため、退色を考えるときは、

顔料そのものの耐候性樹脂の耐候性顔料と樹脂の相性紫外線吸収剤やHALSなどの添加設計酸化チタンなど顔料の表面処理近赤外線への対応

を合わせて見る必要があります。

たとえば酸化チタンは白色顔料として広く使われますが、紫外線下では光触媒的にラジカルを発生させ、有機樹脂に影響する可能性があります。そのため、塗料用途では酸化チタンの結晶形や表面処理、分散状態、樹脂設計が重要になります。塗料技術資料でも、TiO₂顔料は紫外線を遮る一方、光触媒作用により有機樹脂を攻撃するラジカルを発生させる可能性があると説明されています。TiO2-Pigment-on-Gloss-Retention_May-2009.pdf

つまり、退色対策では、単に「良い樹脂を使っている」だけでなく、顔料を含めた塗膜全体の設計が重要です。



施工品質が悪いと、熱と紫外線への余力が落ちる

どれだけ高性能な塗料でも、施工品質が悪ければ本来の性能は発揮されません。

特に退色や色飛びを考えるときは、次の点も重要です。

・塗布量が足りているか・希釈が適正か・下塗り材が合っているか・乾燥時間を守っているか・塗り重ね間隔が適切か・下地処理が十分か・シーリングや補修が適切か・施工時の気温や湿度が適正か

膜厚が不足していれば、紫外線や熱に対する保護層が薄くなります。下地処理が不十分であれば、水分や熱による動きに耐えにくくなります。

つまり、退色は塗料性能だけでなく、施工品質の答え合わせでもあります。



退色診断の方法を示すポスター。住宅の写真と7つのポイントが包括され、色や施工履歴、物件の経過を詳細に説明。青と赤が目立つ。
塗装選びの重要性を解説するインフォグラフィック。退色・色飛びの診断ポイントと、耐紫外線・耐熱性・耐水性の統合設計の必要性を強調している。


私なら退色・色飛びをこう診断する

現場で「色が飛んでいる」と感じた場合、私なら次のような順番で見ます。

1. 方角を見る

南面や西面で強く出ている場合は、紫外線と熱の影響を疑います。北面で目立つ場合は、湿気、汚れ、カビ、藻、結露の影響も見ます。

2. 色を見る

黒、濃グレー、濃紺、濃茶などの濃色は、表面温度上昇を疑います。赤、黄、青、緑などの鮮やかな色は、顔料の耐候性も確認します。

3. 艶を見る

艶が落ちている場合は、色飛びだけでなく、樹脂劣化や表面粗化を見ます。

4. チョーキングを見る

手に粉が付く場合は、顔料退色だけでなく、樹脂の分解や塗膜の粉化が進んでいる可能性があります。

5. 表面温度が上がりやすい条件を見る

西面、濃色、軒なし、金属サイディング、窯業系サイディング、ALCなど、熱の影響を受けやすい条件を確認します。

6. 施工履歴を見る

塗料の種類、塗布量、下塗り、希釈、乾燥時間、施工時期、気温、湿度を確認します。

7. 実物件の経過を見る

同じ塗料で、5年後、10年後、15年後にどうなっているのか。ここが最も説得力のある判断材料になります。


これからの退色対策は「耐紫外線」から「耐光・耐熱・耐水の総合設計」へ

これからの外壁塗装では、退色対策を「紫外線に強い」という言葉だけで終わらせてはいけません。

必要なのは、

・紫外線に強い樹脂設計・熱に強い塗膜設計・顔料の耐候性・近赤外線への配慮・表面温度上昇への配慮・水分や湿気への抵抗性・チョーキングしにくい塗膜設計・適切な下地処理と施工管理・自然暴露試験や実物件の経過確認

です。

特に、猛暑や高温化、濃色外壁の増加を考えると、熱劣化を無視した塗料選びは危険です。




まとめ

退色は、紫外線がスイッチを入れ、熱が劣化速度を上げる

外壁塗装の退色・色飛びは、単純に「紫外線で色が抜けた」という話ではありません。

私の見解では、退色は次のように考えるとわかりやすいです。

紫外線が劣化のスイッチを入れる。熱が劣化速度を上げる。水分や環境が劣化を複雑にする。施工品質が耐久性の余力を決める。実物件の経過が、本当の答えを見せる。

だからこそ、外壁塗装の提案では、

「紫外線に強いです」「高耐久塗料です」「無機塗料です」

という言葉だけでは不十分です。

これからは、

高温下でどうなるのか濃色で表面温度が上がったときどうなるのか色差・光沢保持率・チョーキングはどうか自然暴露ではどうか実物件で10年後どうなっているか

まで確認することが大切です。

外壁塗装は、塗った直後の美しさだけで選ぶものではありません。本当に大切なのは、10年後、15年後にどうなっているかです。

これからの塗料選びは、価格やイメージだけではなく、紫外線・熱・水分・環境を総合的に見て、根拠で判断する時代になっていくと考えます。


記事:KFワールドセラ認定施工店本部 栗田真徳


参考資料

・Atlas Material Testing TechnologyWeather Durability Testing of Paints and Coatings塗料・コーティングの耐候性において、日光、湿気、熱、近赤外線、表面温度、色による温度差などが重要であることを解説。

・American Coatings AssociationWatching Paints Weather塗膜の耐候性評価において、色保持、光沢保持、チョーキング抵抗性などが重要であることを説明。

・気象庁Climate Change in Japan 2025日本の年平均気温上昇、都市部のヒートアイランド影響などについて。

・Synnefa et al.On the development, optical properties and thermal performance of cool colored coatings近赤外線反射顔料を使ったクールカラー塗料の熱的性能について。

・Ramos et al.Impact of Incorporating NIR Reflective Pigments in Finishing Coatings近赤外線反射顔料が日射反射率や表面温度に与える影響について。

・DieboldEffect of TiO₂ Pigment on Gloss Retention酸化チタン顔料、紫外線、ラジカル、樹脂劣化、光沢保持の関係について。

・van Driel et al.A quick assessment of the photocatalytic activity of TiO₂ pigmentsTiO₂顔料の光触媒作用とバインダー劣化、チョーキングの関係について。


A New Perspective on Exterior Paint: Considering Heat Degradation

One common concern in exterior painting is fading or color loss. Homeowners may notice that the wall color becomes lighter after only a few years, that fading is more visible on south- or west-facing walls, that dark-colored walls begin to look whitish, or that the surface loses gloss and appears dull.

Ultraviolet rays are often considered the main cause of paint deterioration. UV light affects the resin and pigments in the coating film and can cause fading, gloss loss, chalking, surface degradation, and other forms of deterioration. However, explaining fading only as “UV damage” is no longer sufficient.

In real exterior walls, many factors overlap: ultraviolet rays, heat, moisture, rain, condensation, wall direction, sunlight angle, local environment, and workmanship. In particular, modern climate conditions—such as extreme heat, rising temperatures, urban heat islands, and the popularity of dark exterior colors—make heat degradation an increasingly important issue.

Fading is not simply a matter of “color disappearing.” It can also be caused by pigment changes, resin deterioration, chalking, loss of gloss, surface roughening, dirt, mold, algae, and accelerated degradation caused by heat. In other words, color fading should be understood as a visible sign of combined deterioration involving pigments, resin, UV light, heat, moisture, environment, and施工 quality.

UV light can trigger deterioration, but heat can accelerate it. Higher surface temperatures may speed up resin oxidation, radical reactions, gloss loss, chalking, blistering, peeling, and substrate movement. Dark-colored walls, such as black, dark gray, navy, or dark brown, are especially important to evaluate because they tend to absorb more sunlight and reach higher surface temperatures.

Heat degradation risk is also increasing because the climate itself is getting warmer. Japan’s average temperature has risen over the long term, and urban areas are affected by heat island conditions. Because of this, exterior paint should now be evaluated not only for UV resistance, but also for how it performs under high surface temperatures, especially on dark-colored walls.

Fading should be evaluated by looking at color difference, gloss retention, chalking, surface condition, moisture effects, pigment and resin design, and施工 quality. Pigment durability, resin durability, UV absorbers, HALS, titanium dioxide surface treatment, and near-infrared response are all important.施工 quality is also critical: coating thickness, dilution, primer compatibility, drying time, recoating interval, substrate preparation, sealant repair, and施工 temperature and humidity all affect durability.

When diagnosing fading, the recommended approach is to check wall direction, color, gloss, chalking, heat-prone conditions,施工 history, and real building performance over time. South and west sides often suggest UV and heat effects, while north-facing areas may involve moisture, dirt, mold, algae, and condensation. Real project performance after 5, 10, or 15 years is the most persuasive evidence.

The conclusion is that future fading prevention should move from simple “UV resistance” to a comprehensive design based on light resistance, heat resistance, and water resistance. Exterior paint should be selected not only by price or catalog claims, but by evidence: test data, natural exposure,施工 quality, and real-world performance over time.

Key message:Fading begins when UV light triggers degradation, heat accelerates the process, moisture and environment make it more complex,施工 quality determines the remaining durability margin, and real building performance reveals the true answer.











 
 
 

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